「たいして気持ちよくない」セックスに対する男の本音とは? 田中俊之さんインタビュー<第二回>【#FocusOn】

「たいして気持ちよくない」セックスに対する男の本音とは? 田中俊之さんインタビュー<第二回>【#FocusOn】

どうして40男は嫌われてしまうのか?その切なくとも悲しい現実と、変えることはできない過去に受けた学校教育…男性学を研究する大正大学 心理社会学部 人間科学科 准教授 田中俊之さんの著書『<40男>はなぜ嫌われるか』(イースト新書)を読めば、40男たちは自分たちがなぜこうも生きづらさを感じるのかが分かり、女性は40男たちのことが少し理解できるかも!? 田中俊之さんインタビュー第二回目です。


前回までの記事はこちらから。

男性学を研究する大正大学 心理社会学部 人間科学科 准教授 田中俊之さんへのインタビュー第二回目。<40男>たちが嫌われる理由には、自分たちにはどうしようもできない学校教育や親の価値観などにも原因があるというお話。

名簿も授業も男女別々だった<40男>たち

――40代女性もなかなかですが、40代男性もかなり生きづらさを感じていますね…。今やイクメンが当たり前のような風潮で、料理や掃除、洗濯などができないと、夫としてどうかと言われてしまう世の中です。しかし、そもそも我々40代が育ってきた時代は男性は外で仕事、女性は基本は専業主婦で仕事はパートタイム、家事や育児は女性のもの、という価値観でしたよね。

そうですね。今は小学校も名簿は男女混合ですが、僕たちの頃は男女別々で出席をとる時は男子から順番に名前が呼ばれるなど明確に男女は上下で別れていました。さらに技術や家庭科といった授業は男女別習で、男子が家庭科を学ぶことはありませんでした。

――本にも書かれていましたが、家庭科をまったく学んでいないのに結婚したら「共働きなんだから家事もちゃんとやってよ」と言われ、女性が望む水準でできないと文句を言われる、というのは考えてみれば辛いですよね…。

教えてもらっていないので、大さじ一杯とか小さじ一杯とかもまったく分からないんです。「今はレシピがネットに山のようにあるんだから、あれを見れば作れるでしょう」と言う人もいますが、知識だけの問題ではありません。女子が家庭科をやっている時間に、男子は技術科を習うことで、家庭に関することは自分の役割ではないと学習してしまったことこそが問題の本質なのです。

――同じ時代を生きてきたはずなのに、女性側はその認識がスッポリ抜けているかもしれませんね。さらにいうと、我々世代の親たちは男子厨房に入らず、という考え方の人たちも多かった。母親が男の子に料理を教えたり、家事をさせるということはあまりなかったように思います。

そうですね。父親は忙しく働いていつも不在で、母親が子育てや家事などを一手に引き受けていた。そういう親の元で育てられたのですから、いくら時代は変わったと言われても、なかなか根本的に意識を変えるのは難しいと思います。さらにいうと、現代の夫婦が男女ともにフルタイムで働いていると言ったって、明確に賃金格差があるわけです。10:7で女性の方が賃金が少ない。つまり、「共働きって言っても俺の方が稼いでいるんだから」という意識が男性にはあるんですよね。実際、労働時間も男性の方が長い夫婦が多いのではないでしょうか。なので家事や育児を平等にしなくてもいい、という免罪符が与えられているような状況がある。

――それに加えて女性側も、自分たちの母親像があるので「家事や育児は女性がするもの」という呪いから完全には解放されていないんですよね。現実的に、私の周りでも保育園に預けるのは心が痛む、とか、食事がちゃんと作れないと罪悪感を持つ、という意見も多いです。子どもが病気をしたら休むのは基本的に母親ですし。

そうなんですよね…。ですが、それが“ジェンダー”、性別による苦しみなんだという認識を持っている人たちは実は少ないんです。

自分たちの生きづらさを“ジェンダーによるもの”と感じている人は少ない

――どういうことでしょうか?

“性差によって役割を課されているのはおかしい”という意識をもち葛藤している人はそんなに多くない、ということです。

――なるほど…。「こういうものだ」と状況を受け入れて、大変だなと感じていてもそれを、“性差による違和感”として捉えることなく、日々を過ごしてしまっていると。

僕が『<40男>はなぜ嫌われるか』(イースト新書)を書いた背景にはそういう部分もあるんです。「ちょっと立ち止まって考えてみようよ」と。「その苦しみは“男”という役割に課せられている思い込みからくるものなのかもしれないよ」と。「あなたがそう思ってしまう理由はなぜなのか?」を考えて欲しい、もっと自分自身に目を向けて欲しい。自分の内面を見つめて、現状とのギャップやなぜそうなっているのか、ということを知ることができれば、対応方法が分かってくるじゃないですか。そうしたらもっと楽に生きられるんじゃないか、そんな風に思ったんです。

射精なんてたいして気持ちの良いものじゃない

――“思い込みによって苦しめられている”という話でいうと、先日TENGAヘルスケア主催の『人生100年時代のセクシャルウェルネスを考える』というフォーラムに参加してきたんです。その中で男性は、「性欲があり性機能なし」と言う人は「性欲はなく性機能あり」と言う人より幸福度が低い、という調査結果が発表されていました。「男性はいくつになっても性機能があることを望んでいるのだな」と感じたんですが、それについてはどう思われますか?

それもですね…“男性はいつまでも性欲があり性機能が充実しているべきだ”と思わされている呪いですよね。本にも書きましたが、性欲にまつわることでも男性は思い込みから苦しめられています。森岡正博さん著の『感じない男』 (ちくま文庫) という本があるんですが、それも読んでいただきたい。射精なんてね、たいして気持ち良くないんですよ。それなのに、勃起して挿入して射精しなきゃ男じゃない、なんて言われ方をする。だから70代80代になってもバイアグラを使ってでも無理やり挿入して射精するセックスをしようとする。同じ年頃の妻に若い頃のセックスパターンを強要しようとしたって妻はしんどいだけですよ。男性だって、心の底から性欲が漲っていて射精を伴うセックスをいくつになってもしたいかと言われたら、多くの人はそうではないと思いますよ。

――射精がたいして気持ち良いものではない、ということに驚きました。女性としても射精を伴うセックスじゃないと男性に悪いんじゃないか、というプレッシャーからセックスが嫌になってしまっている人も多いと思います。しかし、なぜ男性は性欲減退や性機能低下を“ダメなこと”と感じてしまうのでしょうか?

それは男性にとって“できない”ことは否定的な評価であって“困ること”なんです。小さい頃から競争に駆り立てられて、常に“できる自分”でいるように強いられてきた。進学校に入り、難関大学に行き、一流企業に就職する。“できる”の積み重ねこそが“男性にとって良いこと”だと思いこまされてきたわけです。なので“世の中的に上手く生きてきた男性たち”にとって、家庭というものはかなり厳しい環境なんですよね。

――男性にとって射精は大して気持ちのいいものではない。性欲や性機能がないことはダメなことと感じるのは“できない”ことが“困ること”であるから…話を聞けば聞くほど新しい発見のある田中先生のお話。次回は、“男性が家庭に居心地の悪さを感じる理由”などについてです。お楽しみに。※第三回はこちらから

文/和氣 恵子、撮影/鈴木 志江菜

田中俊之さんプロフィール

田中俊之さん 博士(社会学)
1975年、東京都生まれ。大正大学心理社会学部准教授 男性学を主な研究分野とする。著書 『男性学の新展開』(青弓社)、『男がつらいよ―絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA)、『〈40男〉はなぜ嫌われるか』(イースト新書)、『男が働かない、いいじゃないか!』(講談社プラスα新書)、小島慶子×田中俊之『不自由な男たち――その生きづらさは、どこから来るのか』(祥伝社新書)、田中俊之×山田ルイ53世『中年男ルネッサンス』(イースト新書)
「日本では“男”であることと“働く”ということとの結びつきがあまりにも強すぎる」と警鐘を鳴らしている

<40男>はなぜ嫌われるか (イースト新書)

¥ 930

2015年時点で30代後半から40代前半までの男性を、本書では「40男」と呼ぶ。この世代は、「昭和的男らしさ」と「平成的男らしさ」の狭間を生きている。「働いてさえいればいい」と開き直ることも難しいし、若い世代のようにさらりと家事・育児もこなせない、自分の両面性に葛藤し続けてきた男たちである。問題は、若い女性への強い興味に象徴される、そのリアリティと現実のギャップにある。40男の勘違いは、他人に迷惑をかけるだけではない。そのギャップは、僕ら自身の「生きづらさ」に直結しているのだ。



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