映画『パリの家族たち』 女であり娘である私たちの物語【沁みる映画 #01】

映画『パリの家族たち』 女であり娘である私たちの物語【沁みる映画 #01】

映画『パリの家族たち』。そこに描かれている家族は母親と子ども、そして一人の女としての私たち。母の日を直前に控えたパリの女と男たちの日常が時に切なく痛々しい生々しさをもって迫ります。はるか海の向こうの女たちの苦悩や喜びはそのまんま日本の女たちの苦悩と喜びであるように感じた美しい物語。(5月25日(土)からシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開中)


忙しい日常から離れて、映画の世界へトリップしませんか? 心に沁みる上質なストーリーをご紹介。

今回ご紹介するのは2019年5月25日(土)からシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開中の映画『パリの家族たち』です。

※あらすじの紹介と一部“ネタバレ”の部分もありますので、ネタバレがOKな方は是非お読みください。

「あなたは私」同じような思いをもった私たちがパリにいる

現在、公開中の『パリの家族たち』。物語は“母の日”を直前に控えたパリを舞台に、三姉妹と母親を中心に年齢も性格もバラバラな女性たち(とちょっぴりの男たち)が登場して進みます。

三姉妹の長女イザベルは小児科医。子どもの頃の母親との関係が原因でトラウマを抱えています。

次女ダフネは第一線で活躍するジャーナリストでありシングルマザー。ふたりの子どもの母親ではありますが、母親業は“向いてない”と端から子育てする気なし。ベビーシッター(テレーズ)任せで思春期の娘との関係はギクシャクしていて子どもたちはベビーシッターにばかりなついています。

三女ナタリーは独身を謳歌する大学教授。教え子との恋愛を楽しんでいます。子どもに対し嫌悪感を表す女性で、年下恋人の友人たちとのお酒の席でカップルの女性が胸をむき出しにして授乳し、テーブルの上に平気でオムツやお尻ふきを置いていることを非難し、大喧嘩をして席を立ってしまうシーンがあります。

そこで授乳をしながら若い女性がナタリーの彼氏に叫びます

「今度はもっと若い恋人をつくったら!」

若さは強さであると信じきっている、幼く若い女性の年上女性に対する蔑みの言葉。フランスには“年齢を重ねることで女性はより美しく自由になる”という風土があると思っていました。ですが“若さ”を前にした女性の葛藤はいずこも同じなんだ、とリアルを感じました。

そんな彼女たちの母親は、子どもはそっちのけで恋愛や仕事、旅を謳歌した女性。老いて認知症が進む母親との複雑な関係の中、三姉妹は“母の日”に母親との関係を解消しようとします。

三姉妹はたびたび三人で集まりワイン片手に語り合います。そして母親に対する三者三様の複雑な思いを吐露します。その母親に対する彼女たちの思いは、本当に不思議だなあと思うほど、フランス人だから日本人だから、という垣根を感じず「ああ…わかる…」と思うことばかりなのです。

三姉妹と母親とのシーンのなかで印象的だったのが、イザベルと母親とのやり取りです。

身勝手で自分のことしか考えていない母親にダフネとナタリーは嫌気がさし、きつく当たるのに、イザベルはひとり優しく母親に接します。

ですが、そんなイザベルに対し母親は「小さい頃からめんどくさい子どもだった」などと言い、辛く当たります。しかし幼少期からそんな扱いを受けトラウマを抱えているにも関わらず、イザベルは認知症が進む母親に辛抱強く優しく接します。

寒いだろうからと母親に上着を着せようと優しく話しかけ腕を触ると

「触るな!」

と怒鳴られ、うずくまり泣くイザベル。ですが、またしばらくすると立ち上がり恐る恐る母親の髪をとかしはじめます。すると今度は優しい表情になった母親がそれを受け入れ、嬉しそうな表情を浮かべるのです。

このシーンを見た時、なんというほどに母親は子どもにとって残酷でかけがえのないものなんだろう、と胸を締め付けられました。

日本でも“毒親”と言う言葉で、母親との関係に囚われ続けている娘たちの悩みや辛さが言われていますが、“毒親”とまではいかないまでも、母親との関係には誰しも少なからず悩んだり苦しんだりしているのではないでしょうか。

若くして大統領になった女性が思いがけず母親に

三姉妹の次女のベビーシッターであるテレーズは実は若くして大統領になった女性(アンヌ)のママ! 若く美しく強い女性として大統領になったアンヌは思いがけない妊娠出産にすっかり自信を失くし、自分がどう振舞えばいいのか分からなくなってしまいます。

一人の女性としてだけ生きていれば良かった時、アンヌはどこまでも強くなれました。けれど、自分が守らなければ生きていけないものができた時…驚くほど、アンヌは戸惑い弱くなってしまうのです。

これには“母は強し”という言葉が女性たちをどれだけ苦しめ続けているのか、ということに対するエスプリを感じました。

若く強くして一国の大統領にまで上り詰めた素晴らしく優秀な女性でさえも、母親として赤ちゃんを目の前にすると無力感を感じ弱い存在になってしまいます。

こんなエピソードも描かれます。

三姉妹の長女、小児科医のイザベルの元にやんちゃな男の子を連れた母親がやつれきって訪れます。放心した状態で、イザベルの問いにまともに答えられない母親は、子どもたちが部屋から連れていかれた瞬間に泣き叫びます。

「もう限界! いつか子どもたちを殺してしまう。夫は仕事が忙しくて帰ってくるのは子どもたちが寝た後。もう無理!」

「周囲に助けを求められる人はいないの?」

と聞くイザベルに

「こんな状態だって恥ずかしくて言えない」

と答えるのです。母親が追い詰められている状況は日本もフランスも同じ…国が違えど何も変わりません。

それは、女性が女性として世間から求められる役割を全うしようとした瞬間に訪れます。

母は強くなんてない。女性たちは母になり、苦しみながら強くなった。ならざるを得なかった。そんな女たちのリアルがそこには映し出されていました。

“母の日”当日の朝、大統領はジャーナリストのダフネから生放送のインタビューを受け、率直な今の自分の気持ちを伝えます。

予期せぬ妊娠出産で不安になり戸惑ったこと。どうしていいか分からず自信を失くしてしまったこと。それによって弱い大統領でフランスの大統領として相応しくない、と国民を不安にさせてしまったことを詫びます。

その上で「しかし今は母親になった自分は国にとってきっと役に立つと確信している」と言います。

母親になることが尊いことではありません。

母になったことで体験することは、働く女性(大統領)にとって社会や会社にとって、マイナスではなくプラスになり得ることが多々あるはずだということです。

育児休暇が取りづらい、時短勤務で肩身が狭い、そんな風に感じている女性たち(男性はもっと!)は多いと思います。このインタビューはそんな思いをもっている多くの女性たちの背中を強く推してくれる、「自分に自信をもって!」というメッセージのように感じました。

365日奮闘する幸せになりたい女たち。恋もしたい、仕事も成功したい、家族との時間も欲しい!

映画『パリの家族たち』には他にも多くの女性たちが登場します。

予期せぬ妊娠に落ち込みパートナーに伝えられない若い女性

“母の日”のイベントが学校からなくなるということに激怒し先生に詰め寄る母親

娘が自分の母のことを“おかあさん”と呼んだことで母親と絶縁状態にある中年女性

舞台女優として活躍しつつも脳梗塞を経て力いっぱい楽しんで生きようとする老年女性

そして、そんな女性…母親たちの影響を強く受ける男性たち

この映画は“パリの家族”であり“日本の家族”を映し出す、美しい物語です。

映画のコピーには

“365日奮闘する幸せになりたい女たち。恋もしたい、仕事も成功したい、家族との時間も欲しい。”

とあります。

この言葉に少しでも心がざわついたらぜひ映画館へ。きっと「あなたは私」という存在が見つかると思います。

『パリの家族たち』

5月25日(土)、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開

© WILLOW FILMS – UGC IMAGES – ORANGE STUDIO – FRANCE 2 CINÉMA

公式HP:

Twitter、Facebookともに@ParisKazoku

女性大統領、ジャーナリスト、舞台女優、花屋、ベビーシッター、大学教授。パリで働く女たちとその家族の“幸せ”と“自分”探しの物語。『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』監督が贈る、家族に会いたくなる感動作!



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