膣ケアはヘルスケア 健康的なライフスタイルに欠かせない たつのゆりこさんインタビュー<第二回>【#FocusOn】

膣ケアはヘルスケア 健康的なライフスタイルに欠かせない たつのゆりこさんインタビュー<第二回>【#FocusOn】

膣ケアは女性の性の健康のためのヘルスケアのひとつです。自分の体を知り、向き合うことで健康寿命を延ばしいつまでも元気にいきいきと生きることができる。と、長年、膣を見続けてきた助産師のたつのゆりこさんは言います。『ちつのトリセツ』(径書房)を監修した女性の性の健康をサポートする助産師たつのゆりこさんが話す、膣ケアの大切さとは。インタビュー二回目です。


前回の記事はこちらから

女性の膣ケアの体験を書いた『ちつのトリセツ』(径書房)の監修をされた、助産師たつのゆりこさん。たつのさんの助産院には、膣の悩みを持ち、地元のすべての産婦人科に通ったものの悩みが解消しなかった方がいらっしゃるそうです。

彼女たちの中には、自分の身体の一部なのに、膣を触ったことがない方や触れない方も多いそう。しかし膣は筋肉なので膣も凝っています。ちょっとした軽いマッサージが必要なのです。首・肩コリを解消すると頭の血行が良くなるのと同じくらい意義のあるヘルスケアです。そこで、たつのゆりこゆりこさんへのインタビュー第二回目は膣ケアのお話です。

膣に触れることをためらう方が多い

膣ケアの必要性を理解していても、自分で膣を触れられない女性が結構いらっしゃいます。セルフケアを教えている途中にご自身で膣に触れないので、「どうしてなんでしょうね?」と聞いても黙ってしまう方が、医療従事者でもいらっしゃいます。とにかくいろいろな理由や感情が、重なっていることは事実です。何とも言えない状態を言語化するのは難しいですよね。その状況は理解できます。私も症状を医師に理解してもらいたくてあまりに細かく伝えたら、「精神科に行く?」ってまじめに言われたこともありました(笑) 要は繊細な部分なだけにいろいろ考えすぎてしまうのです。そうすると、膣周辺の骨盤底筋領域で起こっている変化にもますます敏感になります。

――確かに触りなれていない方が多いでしょうから、抵抗のある方は多いでしょうね。そういう方のセルフケアの一歩目はどうしたらいいのでしょうか。

なかなか触れない方にはまずは「直接触らなくていいから、お風呂上がりの温まった体で、10分くらい横になって、コットンにオイルをたっぷりつけて、会陰部にあててください」とお伝えしています。湯銭して温かくしたオイルをコットンにつけて、温かいうちに会陰に当てると、当てた瞬間がとても気持ちがいいのです。その「気持ちがいい」に素直に反応すること。ため息が出る人もいるでしょう。会陰のケアをしていると、不思議と息が深く出来るようになるようです。嫌な事があった日ほど意識してケアをすると一瞬の「気持ちいい」という感覚が心のわだかまりを溶かそうとしてくれます。これは私個人の感覚かなと思っていたのですが、クライアントさんからも「膣のケアすると涙があふれてくるんです」と言われたことがありました。また、背筋が伸びる方もいらっしゃるようで、来院される毎に姿勢が良くなってくる方がいらっしゃいます。

――膣ケアをすることは自分の体に向き合うことなんでしょうね。

そうなんです。体の中を血液とは違う何かが循環する感覚がわかります。東洋医学で言う「気がめぐる」感覚ですね。「目が楽になる」とか「イライラが少なくなった」といわれることが多いので、特に東洋医学でいう「肝の機能」に膣ケアは影響を与えると感じています。知らず知らずのうちに緊張していた神経が緩むと、息も楽になります。改善される症状は人によって違いますが、「眠りの質がよくなった」「尿漏れが改善した」「月経前のイライラが改善された」などという変化がおきています。単純に考えても、普段感じたことのない気持ちがいい事を体に与えてあげると、気分転換にはなりますよね。

ましてや陰部はとても敏感なところですから、いろいろな気付きも起こるようです。膣ケアをはじめて「自分を大切にしようと思うようになりました」という感想が多く聞かれるんです。結果として、今までの自分や生活を見直すきっかけにもなるんですね。なので、骨盤底筋の不快な症状も改善していくのだと思います。その証拠に、私のところで施術を受けて、その時は気分良く帰られても、セルフケアが出来ていない方は、残念ながらあまり変化はないようです。そういう場合には、ひとりで何とかしようと力まずに、漢方医など、別の選択肢をすすめることもあります。

――セルフケアがなかなか出来ない場合、何か簡単な方法はあるのでしょうか。

自立心旺盛で負けず嫌いの女性には、仕事と私生活とのオンとオフがなかなか出来ない方やため息が多い方がいらっしゃいます。そういう方にはバイブレーターの存在をお伝えしています。最近のバイブレーターは、手のひらサイズのかわいらしいデザインのものが多く販売されています。私も昔はバイブレーターは性的快感を得るためだけのものだと勘違いしていました。疲れている時にそんなものを使ったら、余計に疲れたり、もしくはリラックスしすぎて、仕事への集中力に影響したらどうしようと思っていたんですね。これも考え過ぎの傾向ですよね。気持ちを切り替えて、形のかわいらしさと好奇心に誘惑されて使ってみると、クリトリス周辺から陰唇の部分をちょっと刺激するだけで、目が開いて、頭が楽になるのがわかりました。すると、かえって仕事がはかどることが意外な発見でした。

――確かにバイブレーターというといびつなカタチをした“大人のオモチャ”というイメージが強い方もいらっしゃって抵抗がある女性は多いですよね。

そうですね。でもね、あるときセックスなんて疲れることはしたくないと嘆いていた女性に、小さいおしゃれな形のバイブレーターを紹介してみました。すると、「バイブレーターってエロだと思っていたけど、すごい!これって健康グッズじゃないですか! 勘違いしてました!」とおっしゃったのです。その方に遊び心があったからだとは思いますが、そのように受け入れられる方は、使用後には顔色がよくなって、呼吸が深くなっています。

――最近は百貨店でバイブレーターを販売したりしていますね。

ええ、そうですね。みんな本当は興味あるのだと思いますが、なかなか実物を手にする機会に恵まれないようです。でも、以前よりはハードルが下がってきたかもしれません。興味はあるものの敬遠する方の中には「中毒になりそうで怖い」と言う方もいらっしゃるのですが、あまり考えすぎないで遊んでみたら、と伝えています。「バイブレーターを使いすぎて膀胱炎になりませんか?」と心配する方がいらっしゃいますが、それはバイブレーターのせいだけではなく、不潔な状態で使ったり、腸の調子が良くないときだったり、身体が冷えているといった他の原因も隠れています。そういったときはちょっとお休みして、骨盤内の血流をよくしてくれる漢方がいいかもしれませんね。

――ちなみにダイレーター(※)はどうですか?

ダイレーターを使う場合は、下腹部の手術をした場合もあるので、状況に合わせた丁寧な指導が必要ですね。私の場合は、50代後半にぎっくり腰になった時に、腰は治ったのですが、その後自分の膣に小指さえも入らなくなったことがありました。その時にダイレーターを使ってみたのですが、結構むきになっちゃって、あせるほど全身が緊張してくるし、痛み止めに近いジェルを何種類使っても入りませんでした。そこで、全身のリラクゼーションのヒーリングを受けに行きました。その施術が私にはあっていたのでしょうね。全身がゆるんで頭もボーっとできました。そして自宅でオイルを使って再度トライしたところ、スーッと入るんです。奥までしっかりと。びっくりしました。頭と膣は繋がっているんだと改めて感じました。

※ダイレーター:膣拡張器のこと。膣の中に入れて膣を広げるための器具。

頭とお腹、そして膣はつながっている

私は鍼灸師でもあるので人の身体を診るときに、ツボの道である経絡(※※)の視点でもみています。人は頭から足の先まで経絡で繋がっているんですよね。その途中に生殖器があって、膣があって。婦人科系の問題でお越しになる方は、骨盤内の気も血もリンパ液も滞りやすくなっており、お腹も冷たく、固くなっている方が多いです。特に腸の消化力が弱い方は、お腹が冷たく、固くなっているだけでなく、膣も同じように凝りがあり、冷えていて潤い不足です。女性ホルモンも関係していて、本当に、デリケートなんですよ。足の裏の皮膚の状態も、骨盤内の状態が反映しています。

――頭と膣とお腹と足の裏ですか? 全然違う場所にありますが、繋がっているんですね。

そうなんです。結局は全身繋がっているんですよね。首・肩が凝ってる場合は、だいたい膣も凝っています。そして膣が硬いとお腹も硬くなっています。そういう方はストレスが強くて、お腹にためてしまうタイプかもしれません。また、腸に負担がかかるものを食べていたり、食べすぎだったり、すると睡眠の質も低下します。膣が硬くてお腹が硬いと鼻も目も口も乾いていて、頭皮もガチガチです。なので、膣だけでなく、頭皮が乾燥して熱を帯びている方にはオイルマッサージをします。鼻の粘膜が乾いているときには綿棒にオイルをつけて、鼻穴と耳穴口にもオイルをつけた綿棒で潤いを与えます。乾いている方ほどすっきり感があるようです。口腔はセサミオイルでうがいしてもらっています。オイルうがいをすると唾液が分泌されるようです。目が乾いて疲れている方には湯銭した温かいギーのオイルをコットンに含ませて、目の湿布もします。膣の乾燥防止ケアにとどまらず、鎖骨から上の粘膜の穴のケアも加えると、相乗効果で全体の体調がよくなります。

――そんなに変わるのですか?

変わります。みなさん膣だけケアするものと思って私のところに来院されますが、頭皮、口、目や鼻の乾きと繋がっているので、その関連性を体験してもらっています。その状況でお腹を揉むとお腹が柔らかくなるのが早いですし、膣の硬さも解消されるのが早いです。「下半身がホコホコした温かい感じ」になるようです。下半身の血流がよくなるので、「軽くなった」ともいわれますし、腰痛が軽くなる方もいらっしゃいます。また、顔の表情も柔らかくなる方も多いです。

※※経絡:東洋医学で、つぼとつぼを結ぶ道。人体の中の気・血・水の通り道として考え出されたもの

日ごろのお手入れで子宮脱も未然に防げる

――子宮脱って何でしょうか?

子宮が下がってきて膣からでてくることです。子宮は骨盤底筋群とよばれる筋肉にささえられて膣の上部に位置していますが、周囲の筋肉が損傷したり、ゆるむことで下がってきます。すると、下腹部に違和感を感じたり、膣に指を入れるとすぐに触れるようになったり、最終的には膣から出てくる、子宮脱になることもあります。

疲れてくると、下腹部に不自然に力が入っていたり、股間に何かが挟まった感じがしたり、外陰部が盛り上がってきた感があるという時があります。午前中よりも、疲れが出てくる夕方以降や、トイレでいきんだときなどに自覚するようです。子宮脱の前に、子宮が下垂しているという感覚をキャッチできると、子宮脱も未然に防げますよね。

――どんなお手入れをするといいのですか?

子宮を支えている靭帯も筋肉ですから、骨盤底筋群を引き上げる体操をするのが効果的です。骨盤内の筋肉が硬くなって引き上げる感覚がわからない人は、まずは自分で外陰部に手をあてて支える感じで、口をつぼめて、ストローで吸い上げる、引き上げるような意識で。わからないときは、冷えて固くなっている時なので、お風呂で腰湯をして温めながら、お湯を膣で吸い上げるような気持ちでやるとコツをおぼえやすかったりします。お湯の中だと、会陰や膣を指で触りながらできるので、感覚をつかみやすいかと思います。ヨガもいいと思います。それでもわからなければ、婦人科の医師にその旨を伝えて、助産師さんや看護師さんに直接膣壁に触ってもらって、指で圧迫してもらうと、場所がはっきりしてわかりやすくなります。硬くなっているお腹の場合は、横になって下腹部中心をへその方に引き上げるマッサージを行うことも有効だと思います。

骨盤底筋のトレーニングの相談のために私のところに来院される方もいます。クリニックの外来では、骨盤底筋の運動の説明用紙をもらうだけのことが多いようで、「触ったことも見たこともないのにできません」とおっしゃいます。婦人科のクリニックでも「助産師・看護師外来」を設けて、直接膣壁に触れて具体的に指導してもらえるところが増えると患者さんも助かるのになと思います。私の勝手な意見ですが、アラフィフ以降の助産師・看護師さんが対応できると、色々ほかのことも相談できて満足度も増すのではないかと思っています。人にもよりますが。

――子宮下垂になっていてもケアをすればもとの位置に戻ってくれるのでしょうか?

そうですね。子宮を支えているのは靭帯ですから、骨盤底筋体操をボール等を使ってトレーニングをして、恥骨や坐骨結節、仙骨周辺の血流を良くする運動を習慣づけていると、下垂は防げます。ただ、元々腸が弱い方は、内臓が下垂すると子宮も下垂しますので、便秘をしないように、腸の健康にも気をつけるべきですね。腸が弱い方は疲れやすいです。そういう方は、足の三陰交や三里にお灸をすると骨盤内の内臓の血流が良くなりますので、子宮が下がりにくくなります。一番いいのは自然の中で思い切りいい空気を吸って胸を広げ、骨盤底筋群だけでなく、大幹部を左右に捻じったりして、背中の筋肉等のストレッチをすることです。下腹部に負の感情が溜まりやすいと感じる人は、大笑いして吹き飛ばすようにしましょう。産後の方や病後で弱っている方は、晒しを締め付けず、上手にまいておくことが内臓(特に婦人科系は腎臓と肝臓)を寒冷から守ってくれますので有効です。

――予防のためにアラフォーからできることはありますか?

まずは日常生活の見直しからはじめましょう! 性の健康と身体・精神の健康は同じです。繋がっているんです。性のエネルギーは生命のエネルギーですから、不健康な生活をしていて、性の健康だけを望むのはおかしいです。

まずは、就眠が午前様の方へ。がんばって23時までには布団に入りましょう。気がつくと「24時回ってる」となると、焦って余計興奮してしまって眠れないですよね。昔の壁掛けの時計は時刻を音で教えてくれました。「ボーーン…ボーーン」って。そうすると条件反射で自律神経のスイッチが変わるような気がします。せめて、夜だけでも就眠時間が近くなった時、お寺の鐘のような落ち着く音や眠気を誘うようなタイマー時計をセットしておいたり、お茶や香りを使ったり、何か眠りのトリガーになるような事を意識していると、メリハリのある健康的な生活が送れるようになると思います。仕事人間の方は、“24時間戦いますモード”を何とかしましょう。

自分があんなにも頑張れたのは、実は女性ホルモンのおかげも大きかったんだって。閉経してからしみじみとわかることなんです。なのでまずは、女性ホルモンの仕組みをしっかり学びましょう。オキシトシンの仕組みも理解できると、もうすぐ訪れる更年期もたいしたことなく過ごせると思います。

――膣は筋肉、膣ケアは健康になるための行動とおっしゃるたつのさん。最終回は、膣に触りなれていない日本人女性へメッセージをいただきました。必読です! ※5月14日(火)12時公開予定

文/北 奈央子、撮影/鈴木 志江菜

たつの ゆりこ
助産師/看護師/鍼灸師

鹿児島県生まれ。
大学病院から助産院、自宅出産と幅広く勤務経験を持つ。鍼灸師としてアロマテラピーと鍼灸を統合した治療室を開設。女性と子供のための治療室「Be born治療室」を開設。全国的にベビーマッサージの普及活動を行い母子支援に従事する。世田谷に「Be born助産院・産後養生院」を開設、院長就任。更年期女性の健康相談室を開設し、現在に至る。



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