一晩中オムツを握りしめて考えた 「父親をする」という考え方 ファザーリング・ジャパン安藤哲也さんインタビュー【#FocusOn】

一晩中オムツを握りしめて考えた 「父親をする」という考え方 ファザーリング・ジャパン安藤哲也さんインタビュー【#FocusOn】

夫が家事・育児をしてくれないとお悩みの方、必読!ファザーリング・ジャパン安藤哲也さんに「夫をイクメンにする方法」をお伺いしました。自身も3児の父である安藤さんが子育てを通して気づいた「父親をする」とは一体どういうことなのでしょう。


子育てや妻との関係に悩む男性は多いが、それを分かち合う場はない…。Bramanoli初の単独男性インタビューはそんなご自身の経験から2006年にNPO法人ファザーリング・ジャパンを立ち上げた安藤哲也さん。

「笑っている父親を増やせば社会はもっと良くなる!」と講演や本の出版のみならず、ファザーリング・ジャパンから派生した様々な団体に関わり、人生を楽しむ人を一人でも増やそうと精力的に活動をされています。

安藤哲也さんインタビュー第一回です。

憧れのジョン・レノンが育休をとった衝撃

――この度は取材を受けてくださってありがとうございました。実は男性の単独インタビューは安藤さんが初なんです。

そうだったんですか! ありがとうございます。

――今回、リプロダクティブ・ライツについて色々調べている中で「家族の性と生を考えるプロジェクト」に出会い、ファザーリング・ジャパンを知りました。安藤さんは様々な経歴をお持ちですが、どうしてファザーリング・ジャパンを立ち上げたのでしょうか?


それはね、僕自身の経験からなんです。僕には3人の子どもがいるんですが、一人目の娘が生まれた頃の日本は専業主婦が当たり前で父親はバリバリ仕事だけしていればよかった。けれど僕の妻は専業主婦になるような人じゃなくて自分もバリバリ仕事したい女性だったんです。だから子どもが生まれたからって仕事はやめないし、必然的に僕も子育てに関わらざるを得なかった。そのなかで、3年間くらいは育児に悩んでね。周りで子育てしている父親なんていないから相談できる人もいないし。そんな試行錯誤した育児経験を世の中で悩んでいる父親たちに共有したら、もっと笑顔の父親が増えて社会が良くなるんじゃないかって思ったんです。

――そうだったんですね。育児をするようになったのは共働きだったという理由が大きかったんですか。

でもね、父親になったら自分の人生が豊かになりそうだなあって予感がもともとあったんですよ。そんななか妻が妊娠中に『男だって子育て』(岩波書房)という政治学者の広岡守穂先生の書かれた本に出合ってね。広岡先生は男が育児をするっていう考えを世の出した先駆者です。そこに書かれている内容がいいなあって思ったんです。

あとね、子どもの頃からビートルズが大好きで。その影響で今でもロックバンドやってるんですけど、僕が中学二年生の時にジョン・レノンが育休をとったんですよ。それが衝撃でね。カッコいいなあって思って。憧れのジョンが育休とるんだから僕もそうしよう、みたいな(笑)

――ではイクメンの最初のお手本はジョン・レノンなわけですね!

うん。そうだね(笑)

うんちのオムツが替えられない… 一晩オムツを握りしめ考え抜いた結論

――実際にお子さんが生まれてすぐ積極的に育児に参加されたんですか?

いやあ、全然ですよ。当時は仕事が忙しいし、育児を手伝わなきゃなあとは思っているけど、なかなか時間もとれなくて。もちろん時間がある時はオムツを替えたりお風呂に入れたりもするけど、全然戦力じゃないよね。そんな時に妻が怒ったわけですよ「話がちがうじゃないか!」と。「ジョン・レノンになるんじゃなかったの?」って(笑)

現実にはジョンどころか、うんちのオムツすら変えられなくて、「あ、うんちしたな」って思うと奥さんに「うんちしたよ」ってバトンタッチしてた。

そんなんじゃあ怒られますよね。それでね、うんちのオムツも替えようと頑張るんだけどやっぱりできない(笑)一晩中オムツを握りしめて考え続けましたよ。「どうして俺はうんちのおむつが替えられないんだ…」って(笑)

――すごい(笑)

それでね。結論が出たんです。ウンチのオムツを処理するんじゃない、子どもの排泄物は健康のバロメーター。だから朝の一番搾りを見て分析すれば子どもが健康かどうかわかる。つまり毎日子どもの健康状態をチェックするためにオムツ交換をするんだ! と。

――素晴らしいです!(笑)

それからはね、朝ぷーんと臭ってきたら「どれどれ見せてみろ!」と張り切って換えてました(笑)そんなこんなでかれこれ3人の子どもで計7000枚のオムツを交換しましたよ。

――すごいなあ…安藤さんのように、できない理由を考え抜いてできるような思考にもっていける人というのは珍しいと思います。

でもね、母親はみんなやっているでしょ。だから父親ができない、やれないっていうのは言い訳に過ぎないですよね。だって会社では嫌な仕事だってやっているわけだから。

父親になるんじゃない「父親をする」という考え方

――なぜ仕事だと嫌なこともするのに、家庭の事になるとしないのでしょう?

それはね、評価されないからですよ。

――評価…

うん。オムツ替えても誰も評価してくれないでしょう。そりゃそうですよね、母親たちは当たり前にやっていて、褒めてもらおうなんて思ってないんだから。夫がオムツ替えたからって当然だって思っていちいち評価したりはしない。でも男性が平日生きている企業社会は成果主義。その延長線上で家庭でのワーク、育児や家事でもすぐリターンを求めちゃうんです。

プラス、やっぱり男女の役割分担に対する潜在的な思い込みっていうのがあって、育児とか家事って言うのは女性がするものってどこかで思っている男性はまだ多いんです。もちろん女性でもそういう人はいると思います。20年前に比べたら今はもうずいぶん変わってきていると思うけど、やっぱり根強くまだある。

だから本来は妻がやるべきことを僕がしたんだから褒めて欲しいって夫はどこか思っちゃう。それなのに褒めるどころか、せっかくやったのに非難される。「やり方がなってない」とか「もっと手早くやれ」とか。この前、講演会に来ていたパパが「ウンチのオムツをせっかく替えたのに、『またあなたは、お尻ふきを14枚も使ったわね!』って妻に怒られました」って嘆いてました(笑)

そりゃあね、毎日毎日オムツを替えているママは手早く最小限のお尻ふきの枚数でオムツを替えることができるだろうけど、たまにしかやらないパパがいきなりは無理ですよ。だから言ったんです。「育児は質より量だ。週末だけオムツを替えたり、家族サービスしたってダメなんだ。毎日、必ず最低1枚はオムツを替える。そうしたら必ず上手にできるようになる。そして毎日15分でも早く帰る努力をして、やるべき家事をし、かつ大変な育児の大半をしてくれているママに感謝し、労い、話を聴く時間をつくる。そういう小さなことから始めていけばラクになるよ」って。

“父親になる”って言いますが、そうじゃない、僕は“父親をする”=doing fatherだと思ってます。積極的に父親をしていく、家事をして、子どもに関わっていく。そうすることで母親も子どもも笑顔になって家庭が明るく幸せになる。

でもそういうこと言うと「自分の時間がなくなる」っていう男性がいます。でもね、結婚して子どもが生まれたら、子どもと一緒にいる時間も自分の時間だろうと僕は思うんです。優先順位を間違えてモヤモヤしている父親たちは、まずはそういう考え方から改めていかなきゃいけないと思いますね。

――常に笑顔でパワフルにご自身の経験を語ってくれる安藤さん。第二回目はOSをバージョンアップしていかなきゃいけない、というお話です。※続きはこちらから

文/和氣 恵子、撮影/鈴木 志江菜


ファザーリング・ジャパン代表 安藤哲也さん

1962年生まれ。3児の父。出版社、書店、IT企業など9回の転職を経て2006年にファザーリング・ジャパンを設立。「育児も仕事も人生も笑って楽しめる父親を増やしたい」と講演や企業セミナーなどで全国を飛び回る。著者に『「パパは大変」が「面白い!」に変わる本』(扶桑社BOOKS)、『パパとママの育児戦略』(repicbook)等多数。

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