【#FocusOn】セックスをポジティブなものにしたい 「#なんでないの」福田和子さんインタビュー<最終回>

【#FocusOn】セックスをポジティブなものにしたい 「#なんでないの」福田和子さんインタビュー<最終回>

スウェーデンに留学して帰国後「#なんでないの」を立ち上げた福田和子さん。日本では子どものころからネガティブなセックスのイメージを植えつけられているのではないか、と問題提起をいただきました。セックスがポジティブなイメージになれば、もっと楽しめ、性暴力の排除や避妊への主体的な行動につながるのでは、と、熱い想いをお伺いしました。最終回です。


夫婦でも「産まないなら避妊する」は当たり前のこと

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――Bramanoli読者は40代の女性が多いのですが、この世代に特に伝えたいことはありますか?

たくさんあります!(笑) 「#なんでないの」のホームページではみなさんの声「Voice」を集めているのですが、Voiceを集めていると、意外と30~40代の方からの声が多いんです。その内容の多くは、夫が避妊をしてくれないという悩みです。驚くことに夫婦間で避妊ができていないエピソードが多いのです。他国では、例えば子どもが生まれて、もう子どもは産まないと決めたらIUD(Intrauterine device、子宮内避妊用具)をいれたり、不妊手術(卵管結紮など)をしたりすることも少なくありません。結婚していても避妊は普通に行われていますし、男性まかせにしていません。日本では結婚していて避妊する、という考えがあまり普及していないように思います。妊娠して中絶をしたご夫婦の娘さんからの切実な声もいただいたことがあります。

私の母は50代前半ですが、女性がコントロールできる避妊法はピルしか知りません。それも私を通して知ったようものです。日本は低用量ピルの導入が1999年ととても遅かったんです。アメリカでは高用量のピルが1955年から認可され、血栓症のリスクなどが高かったため、1973年には用量を抑えた低用量ピルが発売されています。しかし日本は高用量ピルの導入はそれほどアメリカに遅れをとらなかったのに、低用量ピルの導入が26年遅れ! その間、副作用が多く、本来は避妊には向かない中・高用量ピルが長年避妊に使われてしまい、私の母を含む多くの人がピルは副作用があるという悪いイメージをもっています。今の低容量ピルは安全に飲めるのですが、情報がアップデートされておらず、悪いイメージのままです。ピルしか知らず、そのピルにも抵抗があって、その上「もう出産はしないだろう」と思っているけれど避妊していない人が多い。でも40代でも妊娠はします。それもあって40代の中絶数が多くなってしまっているのではないでしょうか。

――本当に悲しい現実ですね。

はい。なので、そうではなくて自分で「もう出産はしない」と決めたのであれば避妊をするのが当たり前にしたいと思っています。親がピルにマイナスイメージを持っているので、子どもはピルの話を親にできません。本来であれば、ある程度の年齢になったら親から情報を伝えてほしいです。しかし、今の日本では親が情報を伝えられないどころか、子どもが外で情報を得ても親が知らないのだから親には相談もできない状況です。私のスウェーデン人の友人は16~17歳になったら、母親から「ユースクリニックにいって避妊の話をきいてきなさい」って促されたそうです。日本もこうなってほしいと思っています。

――確かに、避妊の話を親からきいたことないですね。ピルもなんとなく知っていましたが、ちゃんと勉強するまでは悪いイメージしかありませんでした。

日本では、親が「セックスしてはダメ」と言いますよね。結婚するまではダメ、とか成人するまではダメ、とか。その大きな理由のひとつは「妊娠」ですよね。誤って妊娠してしまっては困る、と。だとしたら、ただダメというよりも、自衛できる方法を自分の子どもに教えるべきです。そもそも親とセックスや避妊の話しをあまりしないですよね。親が話しにくいといった姿を見せてしまうと、その子もパートナーや周囲に相談できなくなってしまうと思います。避妊具を含めどんどん状況は変わってきていますから、子どものことを考えて、ちゃんとした情報を得て子どもに伝えてほしいです。

――それにはまず親がちゃんとした情報を得ないといけないですね。今の親世代はちゃんと教わってきていないですから、情報をアップデートしたり、勉強する機会がほしいですね。最後に今後活動を通してどんな日本社会を実現したいと思っているか教えてください。

セックスをポジティブなイメージにしたい!

「避妊具について話しにくい」という感覚が日本人にはあると思います。これが変わったらいいなと思います。性や避妊具について話したり、考えたりすることは年代を問わず当たり前のことです。私、食べることとセックスは似ていると思っているんです。例えば「ピーマンがきらい」や「今日はしょっぱいものが食べたい」と同じで、セックスにも好みがあるし、日によっても相手によってもしたいことは違います。ピーマンが嫌いな人と食事をするときはピーマンは入れませんよね。ピーマン抜きの美味しい食事を考えて食べる。ふたりが濃い味が嫌いだったら薄口の味付けにする。そうやって大切な人との食事を楽しむために最大限工夫して美味しい食事を味わおうとしますよね。セックスも同じです。こういうプレイは好きじゃないならそれを相手に伝えて、それ抜きの楽しいお互いが満足するセックスをする。今日はロマンティックなセックスの気分だな、と思ったらふたりでロマンティックに演出する。そもそも日本は「セックスが楽しいのはダメ」みたいな風潮がありませんか? 食欲は楽しく満たすのに性欲は楽しく満たしちゃいけないなんておかしい!

――そうですよね!とても共感できます。

以前テレビ番組に出させていただいたときに、女性たちが「相手にNoとはなんとなく言えない」とか、「オーガズムに達したフリをしている」と言っていました。スウェーデンではセックスに関して男女ともに楽しむことが基本にあったような気がします。なぜ日本人がセックスを楽しめないのかな…と思った時に、日本人の中ではセックスがネガティブなものだから、楽しむことを追求できていないのではないか、と思ったんです。そのためか、性暴力との境界もなんだか曖昧になっているように思います。日本の世の中にあふれるアダルト動画は、現実であれば性暴力以外の何者でもないものが取り上げられていて、日本の若者はそれをセックスとして植えつけられていきます。そんなアダルト動画ばかりみていたら、ポジティブなセックスのイメージなんて作れませんよね。お互いの合意があって楽しむもの、というイメージがなく、一方的に押し倒されるイメージばかりをセックスとして植えつけられていたら「No」という力を女性が持つことは本当に難しいです。

――誰でも簡単に酷い性描写の動画を見ることができる現代は本当に恐ろしいと思います。セックスに対して幸せなイメージを持ててないのに自分が幸せなセックスができるなんて信じられないし、できるなんて思えませんよね…セックスレスの夫婦が増えていたり若者がセックスに意欲的ではないのにはそういった背景があるのかもしれませんね。

そう思います。セックスに対して幸せなイメージを持つことが本当に大切なんです。そしてセックスは自分を満たしてくれるすごくいいものなんだって知ることです。食事も一緒ですよね。まずい料理しか食べたことがなかったら本当においしい食事がどんなものか想像できません。今の日本のセックスは「まずくて当たり前」になってしまっているように思います。「おいしいものを食べたい」と言うのと同じように「いいセックスをしたい」、なんて言ったら、「はしたない」って言われそうで言いにくい。でも「楽しいセックスをしようよ」ということは、セックスを全部受け入れるのではなく、むしろイヤなものを排除することではないでしょうか。セックスがポジティブなイメージになれば、もっともっと性暴力の被害の声も上がると思いませんか? 「こんなのセックスじゃない!ただの暴力だ!」って。

――セックスは楽しいものであるからこそ、心の底から楽しむために避妊などの正しい情報を得て自分に合った選択をする。当たり前のことのようですが、日本人が全然できていないことを痛感しました。福田さん、本当にありがとうございました!

文/北 奈央子、撮影/鈴木志江菜



福田和子さん
(国際基督教大学公共政策専攻 、#なんでないのプロジェクト代表)
1995年東京うまれ。大学入学当初から日本の性産業の歴史やジェンダーについて学ぶ中、2016年より1年間スウェーデンへ留学。日本とスウェーデンにおける性を取り巻く環境の余りの違いに愕然とし、帰国後、性の健康を当たり前に守れる社会を目指す「#なんでないの プロジェクト」を開始。「性で傷つくのではなく、人生豊かになる社会に」がモットー。執筆活動の他、講演活動などを行っている。世界性科学会Youth Initiative Committee委員、性の健康医学財団機関誌『性の健康』編集委員。





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