【#FocusOn】社会はみんなで変えていくもの 「#なんでないの」を立ち上げた福田和子さんインタビュー<第二回>

【#FocusOn】社会はみんなで変えていくもの 「#なんでないの」を立ち上げた福田和子さんインタビュー<第二回>

スウェーデン留学から帰国後「#なんでないの」を立ち上げた福田和子さん。いつの間にか自分に刷り込まれていた日本の常識を留学中に感じ、日本の常識は世界の常識ではないことを知ったそうです。スウェーデンでは若者や女性もエンパワーされていて、声をあげて社会を変えていくという意識があります。世界の当たり前を日本の当たり前にしたい。第二回では、その想いをお伺いしました。


いつの間にか刷り込まれていた日本のジェンダー感

前回までの記事はこちらから

スウェーデンも「完全ではない」ですが、ジェンダーにおいて対等であることにプライドがあると思います。日本も男女平等が推進されて、お茶汲みとか、料理とか、お酌とか女性がこれまでしてきたことを、女性がやらなくていい、と少しずつはなってきていますよね。ですが、実際には男性はやってくれたら嬉しいと思っていると思うんです。私は海外に住んだことはなく、ずっと日本で育ってきましたので、スウェーデンで自分にも日本のジェンダー感が刷り込まれていたんだ!と思った出来事がいくつかありました。

ひとつはお酌です。強要するのはセクハラになるので、最近は控えている人が多いと思いますが、実際には若い女性にお酒をついでもらったら、やっぱり喜びますよね。そして私たち女性側も無意識にそういう行動をすることがありますよね。ある時、スウェーデンの友人たちと食事に行って、ある年上の男性にお酒をついだんです。そうしたら喜ぶどころかイヤな顔をされたんですよ。「君とぼくは対等な関係だと思っているんだけど、君はそう感じてなかったの? そもそもお酒をつぐくらい自分でできるよ」と。スウェーデンでは、医者も弁護士も「○○先生」とは呼びません。名前です。先輩、後輩もありません。私自身、ジェンダーに関して「男だから、女だから」というような考えをもっている人間ではないと思っていたので、日本人特有の考え方、価値観、行動がすりこまれていて、無意識にやっていた自分に驚き、ショックでした。

もうひとつは彼氏に料理を作ってあげたときのことです。留学中にスウェーデン人の彼氏がいたんですが、単純に喜ぶかなあと思って料理を作ったんです。そうしたら「なんで全部ひとりで作ろうとするの?自分だって料理できるし、一緒に作った方が楽しいじゃない」といわれました。「君は今ジェンダーを学んでるけど、男女平等意識はまだまだ薄いね。日本のジェンダー感が染み付いているんだね」と、彼からいわれてしまいました。

――わかります。私たちは無意識に女性に求められることをしてしまっているんですよね。そうあらねばならない、と思っている女性も多くいると思います。それが女性として美しい姿だと…。そういう感覚を女性側も変えていかなければいけませんね。他にもスウェーデンと日本の文化や考え方に違いを感じたことはありますか?

そうですね。例えば、ユースクリニックに低用量ピルをもらいにいったときに、自分自身に責任をもつ素晴らしい行為だ、と褒められました。こんなのって日本じゃ考えられないですよね。学生がピルをもらいに行ったら軽蔑の目で見る人たちもたくさんいると思います。スウェーデンでは、避妊に関して自分で考えて教えてもらいに行き、選択する、ということ、つまり自分で行動するということは、自立していて責任を持っていて素晴らしいことだとされているんです。まさに日本とは真逆です。日本は性に関して、女性が主体的に動くことはいいことではないように言われますよね。でも本当はとてもポジティブなことなんだなと、その時強烈に感じました。

スウェーデンではどんな場面でも、自分の意見を持っていることが大事でした。主体性がある方が好まれるというか…。例えば友人と食事にいくとき「何が食べたい?」と聞かれて「なんでもいい」と言ったら寿司なのかハンバーガーなのか、なにが食べたいのか、自分の意見を求められます。それで私だけ寿司で他の人がハンバーガーが食べたいのだったらテイクアウトしてどこかで食べればいいし、私もハンバーガーでいいならみんなでハンバーガー屋に行けばいい、と。みんなで意見を言って、その上で解決策を出すという考え方なんです。

スウェーデンでは社会はみんなで変えていくもの

――自分で意見をもって行動していくことが、当たり前で、それが性にも繋がっているということですね。一方で、福田さんの周りの日本の学生さんはどうですか?

そうですね…私がこんな感じなので、私の周りには自分の意見を持っている人が多いと思います。そして、「おかしいな」と思うことがあったら声をあげる人もいます。ですが、社会に適応した方がラクって考えている人のほうが多いように思います。男女問わず対等にいたいって思っていると逆に生きづらい、だから感覚をにぶらせている方がラクだと思っているんじゃないかなと。みんななんとなく気づいているけれど、目を背けておこうというか…。

――それは大人の社会でも同じですね。違和感を感じたり嫌だと思っても声を上げたら叩かれるかもしれないし、面倒くさいことに巻き込まれるかもしれない。だったら見てみぬふりをしちゃおうと。そうすれば目上の人から可愛がってもらえそうだし、とかね…

本当にそう! 日本は中学に入ると部活に入りますよね。このときにちょっとした年齢の差でものすごく厳しい上下関係に巻き込まれて、年下の意見が通らないことを植えつけられていくと思いませんか? 生まれたのが一年や二年早かったり遅かったりしただけなのに自分の意見が不条理に通らないのです。だから日本にはEmpowermentってないなと思います。疑問を投げかけるなら部活をやめればいい、この状況を変えられなくて当たり前なんだと植え込まれていると思います。これって本当に恐ろしいことですよね。

スウェーデンの政党には「Youth Political Party」という各政党に若者版の政党があるんです。未成年でも参加できます。若者が声を上げられる、Empowermentされる仕組みができているのです。

――うわあ…どこまでも進んでいますね…。ジェンダーだけではなく、年齢の壁も超えている…

そうなんです。今の日本って女性が権利を奪われているだけでなく、男性も権利を奪われていると思いませんか? 夫婦平等に家事も育児も仕事もする、となんとなく風潮としてはなっていますが、女性は子どもを産んで会社を辞めても何にも言われないしむしろ歓迎されたりするけど、男性が同じことをしたら白い目で見られますよね。「女のくせに」という言葉がありますが「男のくせに」ともいわれる。まずその異常性に気がつかないといけません! …気がついちゃうと大変なんですけど…(笑)、でも、“気づいて動いていく”それがEmpowermentです。自分の思うように生きていいんだよ、社会は変えていけるんだよ、と伝えていきたいです。

世界の当たり前を、日本でも当たり前にしたい

――日本の社会は特に弱者からのボトムアップの声が届く仕組みがないですよね。それに教育も詰込み型ですから、よくしていく、変えていく、という意識はなかなか持てないように思います…そんな日本の状況の中で福田さんは具体的に今後どんなことをされていく予定ですか?

講演、情報発信に加えてYouTubeチャンネルをはじめようかと思っています。いままでひとりでやってきましたが、仲間ができてきたので、30秒くらいの、コンドームのつけ方とか避妊の方法などを紹介をする動画をつくっていこうかと思っています。講演した時などに「こんな感じで性とか避妊のことを話してもいいんですね」ってよく言われます。性のことって暗いことでも、こそこそ話すことでもないし、話をしたら話したで「セックス好きなのね」と色眼鏡で見られることでもないんです。普通に肩の力を抜いて日常会話としてしていいことなんだ、と思ってもらいたいです。電車の中で見られるレベルの動画を作っていきたいと思っています。

「#なんでないの」は実はネーミングをすごく考えたんです。多分私の話していることって本来”あったらいいな”レベルのものではないんです。そうじゃなくて、あって当たり前のものなんです。だって、世界中の人たちが“当たり前”に使っているんですもん。低用量ピルより便利な注射やインプラントを求めることって、求めすぎじゃなく、普通なことなんです。WHOの避妊具の必須リストにも入っているんですよ! それなのに、日本にはないものもあるし、高額でなかなか手に入らないものも手に入りづらいものもある。あきらめることになれるのではなく、それを享受(きょうじゅ)して当たり前でしょ。それがないっておかしくない?という想いをこめて名づけました。「なんでないの?」って自己肯定感が高めな言葉だと思います。でもそのくらいに思っていい、本気でそう思います。

――日本の性にまつわる常識がどれだけ世界の非常識なのか教えてくれた福田さん。次回は実際どんな避妊具が世界にあって日本にないのか、具体的にお話いただきました。

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文/北 奈央子、撮影/鈴木志江菜



福田和子さん
福田和子(国際基督教大学公共政策専攻 、#なんでないのプロジェクト代表)
1995年東京うまれ。大学入学当初から日本の性産業の歴史やジェンダーについて学ぶ中、2016年より1年間スウェーデンへ留学。日本とスウェーデンにおける性を取り巻く環境の余りの違いに愕然とし、帰国後、性の健康を当たり前に守れる社会を目指す「#なんでないの プロジェクト」を開始。「性で傷つくのではなく、人生豊かになる社会に」がモットー。執筆活動の他、講演活動などを行っている。世界性科学会Youth Initiative Committee委員、性の健康医学財団機関誌『性の健康』編集委員。




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