【#FocusOn】「腹が立つのは自分の思考のクセに気が付いていないから」医学博士 山下あきこさんインタビュー<第三回>

【#FocusOn】「腹が立つのは自分の思考のクセに気が付いていないから」医学博士 山下あきこさんインタビュー<第三回>

自分のカラダの状態や感情に気づくことがとても大切だということを医学博士の山下あきこ先生に前回教えていただきました。今回は他者への怒りの原因は自分の思考のクセに気が付いていないから、と言うお話です。インタビュー第三回目です。


その怒り、自分の思考のクセが原因です

前回の記事はこちらから

――先生はポジティブ心理学も学ばれていますが、これはどういった心理学なのでしょうか?

ポジティブ心理学はアメリカで20年ほど前に始まりました。それまでの心理学はネガティブな部分に焦点をあてて、なぜそういった状況になってしまうのか、ということを考えて治療する、というアプローチでした。ですが、ポジティブ心理学は「どうしたら幸福な状態になれるのか」というところが起点になるんです。

――素敵ですね! 具体的にはどういったアプローチになるのですか?

ネガティブになってしまう時の思考のクセを知るように心がけます。例えば「どうせ」とか「やっぱり」「いつも私ばかり」「これからもずっと」などの言葉をよく使っているな、と気づくとします。すると次にどんな時に、“どうせ”と思ってしまうのかな、ということについて考えます。なぜ、“どうせ”と思ってしまうのか、原因を考えます。すると“どうせ”と思わないようにするためにはどうしたらいいのか、ということについて考えることができます。

――なるほど。確かに家庭内で「なんで私ばっかり○○しなきゃいけないの!」と腹を立てることはよくあります(笑)でもその感情の原因がなんなのか、ということについて考えたことはありませんでした。起きた出来事について怒っているだけで。

そうなんですよね。そういう時に、「ああ、あの時、私ばっかり!」と腹を立てた原因は自分のなかにこういう感情があったからなんだな、などと気が付くことができるとそうならないように予防することができるようになります。実際に私もポジティブ心理学を学びだして子どもたちに対して腹を立てたりすることが少なくなったように思います。

――それは素晴らしいですね。私も実践しなければ(笑)子どもに対して…ということで思ったんですが、関係性が近ければ近いほど、怒りを持ちやすくなる気がするのですがその辺は関係ありますか? 例えば、親と子どもとか夫と妻、上司と部下とか…

人間の思考のクセとして、弱い者に対して怒りがでやすい、という傾向はあります。あとは慣れ親しんだ人に対してもでやすいですね。上司が部下に怒りを露わにするのはその人が明らかに自分が上で部下が下、だと思っているということです。

――なるほど…もしも自分が弱い立場の人間にイラっとして怒りを出しそうになってしまった時にはどうしたらいいのでしょうか?

時間を置くことです。反射的に言葉をださない。これはアンガーマネジメントでもありますが、イラッとしたら、10から逆に数えるとか呼吸に集中するとか、とにかく感情が沸き起こってから発言するまで間を持つように意識することですね。一呼吸置くことで怒りは沸点から下がってくるので、冷静に話ができるようになります。これも頭では分かっていてもすぐできることではないのでトレーニングが必要ですけどね。

その人の怒りはその人のもの 自分とは関係ないものとして客観視する

――自分の怒りはコントロールできるようになる、ということは分かりました。逆に怒りをぶつけられた時にはどうすればいいのでしょうか? すごく悲しくなったり腹が立ったりしてしまうと思うのですが。

先ほどの話でお分かりいただけたかと思うのですが、怒りの原因は怒っている人にあります。なので、何か怒られたり感情をぶつけられたりしても「私には関係ない」と思えばいいんです。私はそうしてます(笑)

――すごい! 私もこれからはそう意識します! …難しそうだけど…あと、これもお伺いしたかったのですが、怒ると言葉が出なくなってしまう人がいますよね。そういう人はどうしたらいいのでしょうか? またそういう人にはどう対応してあげたらいいのでしょうか?

怒ると無言になってしまう人に対して何を考えているのか勝手に考え始めるとイライラしてしまいますよね。なので同じように「あの人の怒りはあの人のもの。私には関係ない」と思って、別のことなどをしていればいいんだと思います。相手の怒りが治まって普通にコミュニケーションがとれるようになったら、怒っていた原因についても話してくれるかもしれません。

――日本人女性は自分さえ我慢すればいい、と思って怒りや悲しみの感情を表現せずにそれこそだんまりになってしまう人も多くいると思います。あとは「わかってくれるだろう」と思っていたり…。その点についてはどう思いますか?

話してくれないストレスを感じている相手のことを思うべきだと思います。話さなければ自分の思っていることは伝わりません。自分自身だってどうしてそういう感情になっているのか、考えたり話したりしないと分からないですよね。特に、怒りの感情は徐々に徐々に積み重なってとうとう爆発する、なんてことがあります。なので、なるべく小さいうちに気付いて、小出しにすることが大切なんです。それが決定的な衝突を避ける一番の方法です。

――すごく良く分かります…。ポジティブ心理学というのはマインドフルネスの一部なのでしょうか?

そうですね。マインドフルネスとポジティブ心理学にはすごく共通点があります。例えばカラダの変化に気づく、気持ちの変化に気づく、ということで思考の変化が生まれ、行動も変わってくる、などの点ですね。ですが、マインドフルネスの世界はもっと広くて…ポジティブ心理学も包括していると言ってもいいのかもしれません。

――日本ではポジティブ心理学は普及しているのでしょうか?

山下さん:普及しているとは言い難いですね。未病の分野で、治療とは違うのでなかなか臨床に応用しづらいという現実があります。

――ポジティブ心理学を知ると、随分他者とのコミュニケーションが変わってくるようですね。次回は頭で思ったことは現実になる、というお話です。第四回に続きます。※12月8日(土)公開予定


文/和氣恵子、撮影/鈴木志江菜

山下あきこさん
1974年佐賀県生まれ。医学博士、神経内科・内科医師。診療や研究を行う中で、高齢になっても自分らしく生きるための方法を模索し続けてきた。2016年に健康習慣を身につけるサービスを提供したいと考え、株式会社マインドフルヘルスを設立。主に健康や自己実現に関するセミナーや研修を企業や一般向けに行い、行動変容を促すスキルと正しい知識を提供している。マインドフルネスVRを楽しめるスマートフォンアプリの開発・配信も手がける。
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