【#FocusOn】性について普通に話せる社会にしたい「#なんでないの」福田和子さん インタビュー<第一回>

【#FocusOn】性について普通に話せる社会にしたい「#なんでないの」福田和子さん インタビュー<第一回>

スウェーデンに留学して帰国後「#なんでないの」プロジェクトを立ち上げた福田和子さん。性への姿勢、お互いの関係の築き方、若者の声が反映される仕組みや若者への配慮など、日本との違いを実感し、「日本人ももっと知らなければ!」と強く感じて活動をはじめました。セックスをポジティブに捉え、性について普通に話せる社会にしたい、と熱く語る福田さん。第一回目は性先進国スウェーデンの性事情についてお話を伺いました。


数々の衝撃を受けた性先進国スウェーデン

――なぜスウェーデンに留学をされたのですか?

新宿で育ったからなのか、大学入学前から性産業の歴史に興味がありました。スウェーデンは、性サービスを、売った方ではなく買った方が罰せられるという法律がはじめてできた国です。でもスウェーデンも昔から性教育や男女平等が進んでいたわけではなく、避妊具の情報を伝えることが違法だったり中絶が禁止されていてデンマークまで行って中絶していた時代もあったそうです。そんな中、「自分たちの人権が侵害されている!」と女性たちが立ち上がり、避妊方法についてスウェーデン中に伝える活動を地道に行っていく中で「RFSU」というスウェーデン性教育協会が1933年に立ち上がりました。

――1930年代ですか。ウーマンリブよりもずいぶん前ですね! 「RFSU」とはどんな団体なんですか?

スウェーデンの性教育協会はNPO法人で、スウェーデンでは社会的にとても影響のある団体です。例えば、世界でも有数の規模を持つストックホルムのプライドパレードは勿論、ストックホルムで開催されたトランプ大統領に反対する大規模なウィメンズマーチなど、ジェンダーに関わるできごとでは必ずと言っていい程旗ふり役を務めます。活動内容は多岐に渡り、性教育を普及させるための教材の作成、性教育を主に実施しています。性教育は幅広い年齢の方を対象としていて、例えば高齢者がどうやったら楽しいセックスをできるか、などといったものもあります。アドボカシー活動(※1)ももちろんしています。若者と近い距離にいるので、若者の声やデータを集めて政治に反映する力をもっています。また、コンドームやセックストイを販売する関連企業があり、その収益がNPOの活動資金となるため、寄付に頼らずに済み、政治や他企業に左右されることがないので強いんですね。

ちなみに、スウェーデンでは薬局にセックストイが普通に置いてあるし、街中にもセックストイの広告が大きく出ているんですよ。コンドームはもちろん、潤滑剤、ローターみたいなものも可愛いパッケージに入っていてやらしい感じはありません。むしろ可愛いから買っちゃいたくなります(笑)スウェーデンの薬局は全部国営なので、品揃えに差はあるとはいえ、基本的な製品ラインナップとして置いてあります。そうそう、セックストイはパッケージも可愛いですが、商品の名前がスウェーデンのトラディショナルな女の子の名前なんです。

――素敵ですね! パッケージ本当に可愛いですね。性が隠されていないオープンな社会だということが本当によく分かります。スウェーデンでの性教育はどういったものなのですか?

学校にもよりますが、だいたい日本でいうと小学校中学年から始まって15歳までに学びおえます。1956年から義務化されていて「性教育」という科目で教わるというよりも、国語や歴史、科学など、いろいろな授業の中に「性教育」が混ぜ込まれているので、とても自然な状態で当たり前のこととして学ぶことができるんです。日本のように「保健体育」として独立していないんです。なのでもちろん男女わけて学ぶようなことはありません。避妊具のことも授業で教わります。日本のように避妊はコンドームとピルだけ、というようなことではなく、たくさんある避妊具について学ぶことができるんです。

――素晴らしいですね! 福田さんの「#なんでないの」の活動に繋がることですが、まず避妊具がコンドームとピル以外にあるということは日本ではほとんど知られていませんね。

そうですね。本当にもったいないし、本当に「なんでないの!?」と思います。あと、スウェーデンの性教育を語るのに欠かせないのが「ユースクリニック」の存在です。

スウェーデンには若者が気軽に性の相談ができるユースクリニックが全国に!

ユースクリニックは、スウェーデン全土に250箇所以上あって、13歳から25歳までの若者が行く場所です。医師、臨床心理士、看護師、助産師、セクソロジスト(性やセックスの専門家)がいて性について教えてもらったり、相談ができたりする場所です。些細なことから深刻な問題まで無料で相談できますし、避妊具も安く買えます。そしてここもポイントなのですが、ユースクリニックに相談した内容は決して親に知られることはありません。若者が行きやすいように空間づくりにも配慮がされています。なので、スウェーデンの若者はカップルや友達と日常の中で当たり前に行っています。スウェーデン人100人に個人的にアンケートをとったことがあるのですが、ユースクリニックを知らなかったのはひとりだけで、その方は移民の中年男性の方でした。

――日本でいうとその役割に近いのは産婦人科なんでしょうか。でもなんとなく行きにくいですよね。そもそも日本では学生がひとりで産婦人科に行ったら保護者と一緒にと言われるケースもありますし、行くことだけで白い目で見られたりすることもありますよね。ユースクリニック素晴らしいです。

本当に! 緊急避妊薬のアフターピル(以降、アフターピル)は日本では産婦人科に行かないと買えないですし、値段も2~3万円します。若者には高い金額です。休日、病院は休みですし、保険証で親に知られるのではないか、など若者はいろいろ不安ですよね。アフターピルの存在を知っていても、それを購入することができず次の生理がくるまで不安と緊張の日々を送る…。こんなのっておかしいですよね。必要なときにアフターピルが入手できないなんて。スウェーデンではアフターピルは薬局で、1,000円程度で買えます。ユースクリニックではもっと安いです。もう本当に日本のひどい状況に泣けてきて…、これが「#なんでないの」を立ち上げたきっかけのひとつでもあります。

帰国して調べてみると、先進国だけでなく、開発途上国でさえもアフターピルを薬局で買える国があることに驚きました。特にアジアは低用量ピルを薬局で買えるところもあります。先進国でもだいたい値段は1,000円前後です。若者にはもっと安く提供しているところもあります。日本ではむしろ若者が入手しにくくて、それで苦しんでいる人がいる状態が許せない!と思いました。実際日本ではいまでも一日約450人が人工妊娠中絶をしている現実があります。

――日本は世界の中で本当に特殊な状況にあるんですね…ショックです。ところで、先ほどでてきたセクソロジストというのは何でしょうか? 初めて聞きました。どんなことをするのですか?

主に性に関する悩みのカウンセリングなどをするのがセクソロジスト(Sexologist)です。日本には教えている大学は多分ないのですが、欧米にはセクソロジーという学問があり、基本的な医療関係のことや臨床心理、ソーシャルワークなどを学んだ上でやっと深められる分野なので、取得するのは本当に大変です。私のスウェーデン人の友人もソーシャルワーカーの資格取得後、さらに勉強してセクソロジストになることを目指しています。私もいずれはセクソロジストを目指したいです。

――スウェーデンと日本の性に関する社会状況の大きな違いにショックを受け帰国後「#なんでないの」を立ち上げた福田さん。さらに福田さんの感じた違いについて聞きました。

第二回へ >>

※政府などに対し政策提言をすること

文/北 奈央子、撮影/鈴木志江菜



福田和子さん
福田和子(国際基督教大学公共政策専攻 、#なんでないのプロジェクト代表)
1995年東京うまれ。大学入学当初から日本の性産業の歴史やジェンダーについて学ぶ中、2016年より1年間スウェーデンへ留学。日本とスウェーデンにおける性を取り巻く環境の余りの違いに愕然とし、帰国後、性の健康を当たり前に守れる社会を目指す「#なんでないの プロジェクト」を開始。「性で傷つくのではなく、人生豊かになる社会に」がモットー。執筆活動の他、講演活動などを行っている。世界性科学会Youth Initiative Committee委員、性の健康医学財団機関誌『性の健康』編集委員。

#なんでないの
アフターピル(緊急避妊薬)を必要とするすべての女性に届けたい!



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