朝日新聞 女子組「オトナの保健室」取材班に突撃インタビュー<前半>

朝日新聞 女子組「オトナの保健室」取材班に突撃インタビュー<前半>

朝日新聞夕刊に月に一回掲載になる「オトナの保健室」という企画をご存知でしょうか? 先日、企画をまとめた一冊の本が発売になりました。そこには2015年4月にスタートしたオトナの保健室に寄せられた読者の赤裸々な想いが詰まっていました。日本を代表する大手新聞の夕刊にこんなことを掲載していいんだ…という衝撃が走り、どうしても記者の方々にお話を伺いたくなり、インタビューを申し込みました。その前半です。


「オンナの保健室」から「オトナの保健室」へ

―この度はインタビューを受けていただいきありがとうございます。大手新聞の夕刊にこんなに赤裸々な記事を掲載していいのか、と非常に驚きました。担当者は何名いらっしゃるのでしょうか? 男女比も教えていただけると嬉しいです。

机さん:記者3名とデスク1名です。男性はデスクの桝井だけです。

―記者の方は3名しかいらっしゃらないのですか! 男性記者を入れない理由はありますか?

桝井さん:取材対象が女性のことが多いので、男性記者だと話しづらくなってしまうんですね。女性同士の方が盛り上がりますし(笑)女性だけで偏りがでるのではないか? という問題で言うと、一応私がいるのでそこは担保できているかなと思っています。

―なるほど。もともとあった「オンナの保健室」から「オトナの保健室」へと変化した理由を教えてください。

桝井さん:もともとオンナの保健室は宋美玄さんに監修していただいて、女性の心と体や健康、妊活、更年期などについて連載をしていました。そして、それに続く企画を考えていた時に “セックスレス”というテーマが上がったんです。当時、国際調査で日本の年間セックス回数が最下位であることなどが話題になっていました。それで、大人が抱えている問題の多くはパートナーシップについてではないだろうか? と思い、「オトナの保健室」という企画を設定し、セックスレスについて最初に取り上げました。

―反響はいかがでしたか?

中塚さん:とても大きかったです。「子どもも見る新聞にこんなことを取り上げていいのか」などお叱りの声もありました。が、それ以上にセックスレスで悩んでいる方々の声が多く寄せられました。

―セックスレスで悩んでいるのは“したいのにしてもらえない”方でしょうか? それとも“したくないのにしている”方でしょうか?

中塚さん:両方ですね。自分は嫌で拒んでいるのに無理やり…とか、逆に受け付けてもらえない…とか。あとはそのなかにパートナーに不倫をされてできなくなった、や、浮気をしている、などのお悩みもありました。そういった読者の方々からの反響でテーマを決めていきます。

―なるほど。読者の方の声でテーマが決まっていくのですね。編集会議などで決めていくのではなく。

机さん:やはり読者の方の反響があってこその紙面なので、読者の方々の声を軸にテーマ設定していきますね。

中塚さん:すべて地続きなんですよね。繋がっています。あるテーマに寄せられた反響からまた新しいテーマが決まる。その繰り返しです。

―今まで一番反響があったのはどんなテーマですか?

中塚さん:セックスレスも大きかったですが、あとは不倫ですかね。新聞で大きく取り上げるようなテーマではないので、とても反響がありました。

―テーマを設定する時に気をつけていることはなんですか?

桝井さん:自分のこととして感じられる身近なことをテーマにするように気を付けています。あとは著名な方へインタビューばかりしてお勉強のような紙面にはしたくないと思っています。

自分の性に関して意識を向けている人はまだまだ少ない

―今まで一番反響がなかったテーマはなんですか?

桝井さん:“自分の性意識が刷り込まれたのはいつですか”というテーマですね。

―どういった内容でしょうか?

桝井さん:自分の性意識の中でしちゃいけない、言っちゃいけないなどのタブーはいったいどこから来ているとおもいますか? というテーマです。もう少し言い回しを変えれば良かったのかもしれませんが、結局アダルトビデオでしょう。という結論に落ち着いてしまいました。

机さん:あとは“母親”ですね。アダルトビデオと母親。それだけで広がりが出なかったんです。

―なぜそのふたつに集約してしまったんだと思いますか?

机さん:そもそも自分の性を掘り下げて考える人が少ないのだと思います。

―たしかに女性として生まれて男性を好きになることや子どもを産むということに対して疑いを持たなかったら、そもそも自分の女性としての性に対して意識を向ける人はあまりいないのかもしれませんね。

中塚さん:ええ。先進的に性問題に対して取り組んでいる方々が先導し、そこに対して誘導されていく…というようなことはあると思いますが、なかなか自発的に考えるということはまだないのだと思います。

―オトナの保健室は「女子組」という企画の一部ですが、そもそもなぜ「女子組」という女性を対象にした企画を考えられたのでしょうか?

桝井さん:男女で比べると女性はあまり新聞に親しみがない、ということがありもっと女性に興味を持ってもらおうと、女性を対象として企画を取り上げるコーナーを作ったんです。ファッションやエンタメ、食に関することなどですね。女性たちにシンパシーを持ってもらいたい、もっと新聞に女性が関わって欲しいと思ったんです。そして読者の皆さんにもっと身近に感じてもらうにはリアルイベントが大切だよね、という話になり、編集部主導でイベントを行うようになりました。今もですが新聞社は広告を担当する部署が主導のイベントはたくさんありますが、記者自らがイベントを企画して運営するというのはすごく珍しいんです。

―女性にもっと新聞を身近に感じてもらいたい、シンパシーを感じて欲しいと始まった女子組企画。そのなかでもオトナの保健室の連載にどういう想いで取り組んでいるのか、後半に続きます。

文/和氣恵子

オトナの保健室: セックスと格闘する女たち (単行本)

¥ 1,404

セックスレス、不倫、セクハラ、そして世界的なうねりを見せる#MeToo運動。 誰しも何らか抱える性に関する問題が、識者のコメント、対談、インタビュー、一般読者投稿から赤裸々に語られる。 語り下ろしの村山由佳さんと酒井順子さんの対談の他、上野千鶴子さん、宋美玄さん、こだまさん、はあちゅうさん、伊藤詩織さん、紗倉まなさんなど各界著名人が登場。 朝日新聞夕刊連載中の人気記事、待望の書籍化。




机美鈴(つくえ・みすず)さん=大阪本社生活文化部記者
1979年生まれ。2002年入社。もとは事件記者だったが、フェミニズムに目覚めて30歳を目前に「転向」。女の生きづらさと日本にはびこる同調圧力が主な取材テーマ。「オトナの保健室」担当記者の一人。




中塚久美子(なかつか・くみこ)さん=大阪本社生活文化部記者
1971年生まれ。1998年入社。2008年から生活文化部。主に、子どもの貧困やジェンダー関連について取材。「オトナの保健室」は立ち上げ当初から2017年8月まで担当。




桝井政則(ますい・まさのり)さん=大阪本社生活文化部デスク
1968年生まれ。1992年入社。「オトナの保健室」には2015年春のスタート時から現在までデスクとして関わる。結婚時に妻の名字となり、仕事では旧姓を使っている。



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