壇蜜さんインタビュー 映画『食べる女』の役どころ ツヤコは完璧な女性 /前半【#FocusOn】

壇蜜さんインタビュー 映画『食べる女』の役どころ ツヤコは完璧な女性 /前半【#FocusOn】

映画『食べる女』。小泉今日子さんが主役を務め、他の女優陣も豪華な面々が顔を揃えます。先日、電撃結婚を発表した前田敦子さんもそのお一人。結婚相手の勝地涼さんと共演しているということもあり、さらに注目を集めています。そんな話題満載の映画の出演者のおひとり、壇蜜さんにインタビューしてきました。


耳のモデル役なのに耳が切れていて大丈夫かしら?って

―作家で脚本家の筒井ともみ先生の小説『食べる女』の映画化で豪華女優陣が出演されていますが、オファーを聞いた時はどう思われましたか?

耳のパーツモデルってことだったんですけど…私…耳が切れてるんです。ピアスで耳が切れちゃって。なので大丈夫かしら?って。いざとなったらCGとかで誤魔化していただけるのかしら?と思ったんですけど(笑)

―わあ!本当ですね。ぜんぜん気が付きませんでした(笑)今回の役どころは夫が浮気して家を出てしまい、耳のパーツモデルをしながら二人の子どもを育てる女性でしたね。

ええ。ツヤコ(役:壇蜜さん)は…完璧な女性なんですよね。美しくて気立てがよくて、料理も上手で愛情深い…。そんな完璧な女性が、出て行ってしまった夫を取り戻すために、最後の望みをかけて「ピクニックに行きましょう」って、子どもたちを連れて突然夫に会いに行くんです。ツヤコにとってそれは“夫を諦めるための儀式”だったのかな?って私は思います。その儀式を経てやっと再び正気に戻ることができたんじゃないかって。

―『食べる女』は多種多様な価値観を持つ女性たちが登場し、“愛”について語り、“食”を楽しんでいますね。

ええ。本当に色々な価値観を持つ大人の女性たちが『食べる女』として描かれていますよね。私のエピソードに関していえば、『食べる女』は母親ではなく子どものミドリ(ツヤコの娘)だったと思っています。愛と食についてミドリの視点で描かれたお話なのだと。

―確かに小説の中でもあのエピソードは“マイ ファースト ワイン”というタイトルで初めてのワイン味として、ミドリの視点で描かれていますね。

はい。子どもの頃、自分を置いて父親が出て行ってしまって、ミドリはそこでひとつ愛を失います。そしてある日突然、母親に連れられて父親の元に行き、父と母の愛が本当に終わってしまうのを目の前で見させられる…同時に、自分も父親にまた捨てられてしまう…。あのエピソードで本当に愛に傷ついたのはツヤコではなくミドリなんですね。

トキヲはきっと「俺なんか必要ない」って思ったんだと思います

―確かにそうですね。しかし、映画を観ても小説を読んでも思ったのですが、あんなに美しい完璧な妻と子ども二人を裏切って他の女性と暮らし始めるなんて本当にどうしようもない夫だと思うのですが、壇蜜さんはああいう男性をどう思われますか?

私はトキヲ(役:RYOさん/ORANGE RANGE)の気持ちがわかります。ツヤコは何も諦めていない女性なんですよね。外見も美しく、美の象徴であるモデルという仕事をしている。そして、料理など家のことも完璧にこなして、ふたりの子どもの良い母親でもある。本当に完璧なんです。そんなツヤコを見ていてトキヲは、自分がこの家族の一員である意味を見失ってしまったんだと思うんです。「ここには自分の居場所なんてない。自分なんか必要ない」って。だから自分を必要としてくれる他の女性の元に走ってしまった。

―それは…とても切ない話ですよね。妻は夫のために完璧であろうとしたのに、夫はそれが原因で出て行ってしまったなんて。私には全然理解できなかったんですが、なぜ、ツヤコは突然「ピクニックに行きましょう」ってトキヲのところに行ったんだと思いますか?

ツヤコはツヤコなりに一生懸命考えたんだと思うんです。夫に普通に「帰ってきて」って言っても帰ってきてくれるはずがない。だったらどうしたらいいだろう?って。考えに考え抜いて、ツヤコの頭の中で、一番スムーズに夫が帰って来てくれるだろうという結論に達したのが「ピクニックに行きましょう」だったんだと思います。でも違うんですよね…あの場でツヤコはトキヲに「お願いだから帰って来て!あなたがいなきゃダメなの!」って泣いてすがらなきゃいけなかった。でもツヤコにはプライドがあって、それはどうしてもできなかった。そして思い切り玉砕してしまった…。最後のワンチャンにかけたけど、ダメだった

―うーん…辛い…。もし壇蜜さんがあの立場だったとして、「お願いだから帰って来て!」って泣いてすがれますか?

できないと思います(笑)私もプライドが邪魔して恐らくそんなことできない…。頭ではそうした方が戻って来てくれるだろうと分かっていても、やっぱりプライドが許さないだろうと思います。それにもし仮に自分のプライドを無視して、精いっぱい泣いてすがったとして、それで玉砕したらもう最悪ですよね。自分が納得していないことをして玉砕したというショックでプライドもズタボロになって立ち直れないかもしれない…。それが怖くてできないと思います。

昔と今、環境が違う中で夫婦の在り方も変わらなければいけないのかなあって

―映画の中では様々な男女の関係、夫婦の在り方が描かれています。現在、日本では3組に1組が離婚していると言われていますが、どうしてそうなってしまうと思いますか?愛し合って結婚したはずなのに、どうしてすれ違ってしまうと?

うーん…私は独身なのでわからない部分はありますが、家の外と内が分断されすぎているのかなあ?と思ったりします。昔は男性が狩りをして、女性が家を守る、というのが当たり前でお互いの理解と家の内と外がちゃんと繋がっていたと思うんです。そうやって協力し合わないと生きていけなかったですしね。けれど、今はそれぞれが外に出て外の世界を持っていて、家庭に帰ってくる。そうすると外にはそれぞれお互いが知らない世界があるのに、家ではひとつになって協力しなきゃいけない…。昔の男性と女性の役割を男女が両方担わなきゃいけない環境のなかで、もしかしたら協力したり分かり合えなくなってしまったりしているのかもしれないですよね。それこそ、ひとつの船に乗って、旦那さんが船を漕いで、奥さんが海に潜って魚を獲る…という生活だったら、離婚とかそういう状況にはならないのかもしれない…なんて。

―なるほど…いろいろな側面で“協力する”という体制というか在り方が、現代の夫婦関係において、まだ日本では確立されていないのかもしれないですね。

そうですね。もっと生きていくことだけにギリギリの状態でお互いがお互いを求め合っていたら、簡単に離婚や別居なんてできないですものね。

子どもと大人の境界にいるミドリ。そして大人になっても子どもの純粋さを忘れないトン子に魅力を感じます

―『食べる女』の中には多種多様な価値観を持つ女性が登場します。壇蜜さんが一番、共感できる、好きだなあと思う役どころは誰ですか?

娘のミドリですね。ミドリが本当に可愛いなあって思います。彼女はちょうど子どもと大人の境界線にいますよね。シングルマザーのママを助けて家のことをして、弟の面倒も見るしっかりした部分を持ちながら、道路に耳をあてて水の音を聞こうとしたり、ダメだと分かっていながら好奇心を抑えきれず、トン子(役:小泉今日子さん)の家に勝手に入ってしまう子どもの部分もあります。彼女の持っている、生きるコトや食べるコト、自分の気持ちに正直なところが本当に好きです。大人になるにつれてそういう“子どもの部分”ってなくしてしまうじゃないですか。そういうところをミドリはまだまだアンバランスに持っていて眩しいなあって思います。

―本当ですね。ミドリのしっかりとした大人びた姿と、どうしようもなく子どもの部分が自然に描かれていてとても現代の子どもらしく可愛らしいなあと思いました。なくしたくないのに大人になるにつれてなくしてしまう部分はありますよね。大人の社会を生きていると。

はい。大人になっても子どもらしい純粋さを残し続けることは本当に難しいですよね。そんななかで、そういう子どもの部分を大人になっても持ち続けているのが、もしかしたらトン子なのかなあって思います。井戸でミドリとトン子が出会うシーンとかすごく象徴的だなあって。枯れてそうで枯れていないトン子の家にある井戸。そしてミドリたちが道路の下にはまだ脈々と水が流れているらしいと道路に耳をあてているのを見て、トン子もミドリ達がいなくなった後にこっそり道路に耳をあてていましたよね(笑)あれはトン子の好奇心旺盛な子どもの部分を象徴する行動のようにも思えますし、“水”というのがトン子の子どもの部分と女性としての部分を暗に示しているのかなあ、とも思ったりもしました。とにかくすごく魅力的な人物だと思います。

―映画の役どころや現代の夫婦関係などについて真摯に語ってくれた壇蜜さん。後半は女と男が愛し合うとはいったいどういうことなのか? 社会問題にもなっているセックスレスなどについてもお話いただきます。お楽しみに。
後半はこちらから

タレント
壇 蜜さん

1980年12月3日生まれ、秋田県出身。多彩な経歴を経た後、グラビアモデルとして芸能活動をはじめ、現在はバラエティ、情報番組などへのテレビ出演からラジオや雑誌などでの執筆活動までも行う。女優としても幅広いジャンルで活躍し、「アラサーちゃん 無修正」(14),「ホリデイラブ」(18)、などのテレビドラマや、『サンブンノイチ』(14)、『関ヶ原』(17)、『星めぐりの町』(18)などの映画作品に出演する。

『食べる女』

【あらすじ】
とある東京の古びた日本家屋の一軒家、通称“モチの家”。家の主は雑文筆家であり、古書店を営む・敦子(トン子)。女主人はおいしい料理を作って、迷える女たちを迎え入れる。男をよせつけない書籍編集者、いけない魅力をふりまくごはんやの女将、2児の母であり夫と別居中のパーツモデル、ぬるい彼に物足りないドラマ制作会社AP、求められると断れない古着セレクトショップ定員、料理ができないあまり夫に逃げられた主婦、BARの手伝いをしながら愛をつらぬくタフな女・・・。今日も、人生に貪欲旺盛な女たちの心と体を満たす、おいしくて、楽しい宴が始まる。

【キャスト】
小泉今日子、沢尻エリカ、前田敦子、広瀬アリス、山田優、壇蜜、シャーロット・ケイト・フォックス、鈴木京香
ユースケ・サンタマリア、池内博之、勝地涼、小池徹平、笠原秀幸、間宮祥太朗、遠藤史也、RYO(ORANGE RANGE)、PANTA(頭脳警察)、真木蔵人

原作本:筒井ともみ『食べる女 決定版』(新潮文庫・8月末刊行予定)
(C)2018「食べる女」倶楽部

おいしい女になろう。おいしい男を育てよう。 2018年9月下旬公開

今夜も、女たちの心と体を満たす、おいしくて楽しい宴が始まる。



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