相続にまつわる注意点 苗字が変わっても相続できる? 内縁の妻の遺産は?【弁護士が教えるかしこい相続相談所#6】

相続にまつわる注意点 苗字が変わっても相続できる? 内縁の妻の遺産は?【弁護士が教えるかしこい相続相談所#6】

こんにちは。弁護士の中川みち子です。相続に関する勘違いってよくあります。これは、日常生活で考える常識と、法律の定めはちょっと違う場合があるからです。きょうは勘違いしやすい相続の注意点をおさらいしたいと思います。


相続人編

子どもがいない場合は配偶者がすべて相続するの?

この連載で何度もお伝えしていますが、子どもがいない場合には配偶者以外にも相続人がいます。
子どもがいない場合、配偶者と被相続人の親(直系尊属)、親や祖父母がいないときは配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続することになります。
自宅不動産しか財産がないのに兄弟に持っていかれてしまうことがないように、子どもがいない夫婦は遺言書を書いておきましょう。

内縁の妻は相続人になれる?

残念ながら今の民法では内縁関係であっても相続人と認められません。事実婚が増加している時代なので考慮してほしい点ですね。
内縁関係の場合は、必ず遺言書を書いておくべきですね。

亡くなった子どもは相続人にカウントしない?

被相続人に子どもが2人いましたが、被相続人より先に亡くなった子どもがいる場合、その子どもの家族は相続人からは除外されると思っておられる方もいます。しかし、亡くなった子どもに子どもがいる場合(被相続人からみると孫)、その孫が代襲相続人になります。お孫さんがいる場合は忘れないようにしましょう。

娘は嫁に行って名字が変わったから相続できない?

配偶者は常に相続人になり、第1順位の相続人は子ども、第2順位は親など直系尊属、第3順位は兄弟姉妹でしたね。子どもはたとえ名字が変わって親と異なる戸籍に入っても相続人です。かなり理解が広まっていると思いますが、嫁に行った子どもは相続の権利がないと勘違いされている人は時々おられます。

また、養子縁組した子どもや、婚姻外で生まれて認知した子どもももちろん相続人になります。内縁関係で子供が生まれた場合、認知しておかないと相続人になりませんので注意すべきですね。相続のために孫を養子にする方もいらっしゃいます。但し、相続税法において認められる養子の数には限度があります。

葬儀編

葬儀費用は遺産から支払ってよい?

親が亡くなった場合、親の遺産から葬儀費用を支払うことはよくあることです。親もそのために一定程度のお金を残しているでしょう。
しかし、葬儀代を負担すべきは一般的には「喪主」と考えられています。葬儀を主宰する喪主がその費用を負担するという考えです。

ただ、最近では遺産から葬儀費用を支払い、残りを相続人で分けるというのが多くなってきています。その場合でも、事前に相続人間で遺産から葬儀費用を支払うことと、どの程度の葬儀にするかをあらかじめ話し合っておきましょう。葬儀費用は意外と高額になります。反対に質素にしすぎて後悔することもあるので、故人の生活ぶりや参列者の人数などに見合ったものにすることが重要です。

実は、兄弟で葬儀の規模や方式でもめて遺産分割がうまくいかなくなるきっかけとなることが少なくありません。親としては、葬儀をどこで、どのような規模で行いしたいかを生前からよく子どもらと話し合ったり、文書に残しておくのがよいですね。

遺産分割編

遺言書があると遺産分割はできない?

遺言書を書くことで遺産の分配に意思を反映することができます。そのため、遺言の作成はとっても重要です。
但し、相続人全員が遺言書と異なる内容で遺産分割をすることを望んだ場合は、そのように遺産分割することも可能です。本来であれば有利な遺言書に反対する必要はないのですが、兄弟間の将来のもめ事を避けたり、遺留分減殺請求で争わないように遺産分割する場合はあります。

遺産分割は長年放置すると請求できなくなる?

ちょっと前ですが、40年前にお亡くなりになった方の遺産分割事件を受任しました。お子さんは80歳代、お亡くなりになってお孫さんが相続人になっている方もいました。金融資産はもう分からないので、不動産のみの分割ということになりました。
依頼者が心配していたのは、被相続人名義の不動産を長男がずっと使用してきたので、時効などで遺産分割できないのでは?ということでした。

しかし、遺産分割請求権に時効はありません。

たとえば不動産を長年占有していると時効取得できるという制度はありますが、相続の場合は「所有の意思をもって占有する」という要件を満たすことが難しいので、相続人の一人が遺産の不動産を占有し続けても時効取得が成立するのは難しいでしょう。

ただ、金融資産などは探すのが非常に大変になりますし、相続人の一人が勝手に引き出しても分からない状態になりかねません。相続人もどんどん増えることになってしまいます。
そのため、遺産分割はできるだけ早く行う方が良いのでしょう。

死亡保険金は相続できる?

被相続人が死亡時に支払われる保険をかけていた場合、その保険金は相続人で分けることになるのでしょうか?
そうではありません。保険金はまずは受取人に受け取る権利が発生します。もし受取人の指定がない場合は、法定相続人に支払われることになります。

そのため、保険金の受取人を子どものひとりにしていた場合、他の相続人は保険金について権利がありません。保険金の金額が他の相続財産と比べて多額であれば特別受益として考慮される程度です。

なお、受取人が指定されている保険金は遺産分割の対象になりませんが、相続税の対象にはなりますのでご注意ください。

相続人がいないと遺産は国庫に入る?

遺言がなく、相続人がおられない場合、亡くなった方の遺産は動かすことができなくなってしまいます。しかし、その場合でも遺産が自動的に国庫に入る訳ではありません。
利害関係者が相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立ててはじめて、相続財産管理が始まります。相続財産管理人は、相続人がいないか、債権者がいないか、特別縁故者がいないかを探して残った財産を適切に処理します。最終的に財産を引き継ぐ人がいない場合に、ようやく国庫に入ることになります。但し、国も利用できない土地などは受け入れてくれないのが現実です。

債務が多くて相続人が相続放棄をする場合は仕方ありませんが、若くしてお亡くなりになり、法定相続人が誰もいないという場合も時々あります。遺言書を作成されていればなぁと思う場面です。

相続は人が亡くなると発生するものなので身近なもののはずです。しかし意外としっかりと理解していないことが多いのです。法律の定めも多岐にわたり複雑です。相続や遺言で分からないことがあれば、気軽に弁護士に相談しましょう。
また、近い将来、もっと手軽に自筆遺言を作成できるよう、法務局で遺言書を預る制度もできます。「終活」にはまだ早い40代ですが、「遺言」をもっと身近に考えて、幸せな「相続」を行えるようにしましょう。

弁護士 中川 みち子



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この記事のライター

平成17年10月に大阪弁護士会に登録する。平成21年8月にきらり法律事務所を立ち上げ現在に至る。

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